1.現場報告 中小企業の再生 4.利益の源泉を探せ!
2.中小企業経営と企業再生 5.経営者の決断
3.新会社で復活!

5. 経営者の決断

 今回は、業務代行を本業とする若い会社のケースを取り上げる。会社の創業はまだ10年足らずであるが、現経営者が以前出版社に勤めていた時に、現在の仕事に市場性があることを発見し、大手の出版社や官庁との取引を、大手企業に競り勝ちながら獲得してきた。この会社の売りは、入力外注先を全国にネット経由で確保し、大手にはなしえない低い価格で受託できる競争力である。

創業期からの仲間と苦労しながらも、会社を軌道に乗せ、生活の目処が着きかけたころ、会社の規模拡大を目指して、事務所の移転や人員増をしたものの、思うように受注が増えなかった。資金繰りも苦しくなり、借入返済のために借入れるという悪循環に落ち入ってしまった。さらに、創業期から苦労をともにしてきた共同経営者も、この会社に見切りをつける者が出る始末で、経営者が営業に専念することが出来なくなり、更なる資金繰りの悪化へと進んでしまった。

そのころから、経営者自身も精神的に落ち込むことが多くなり、経営に自信を持てなくなった時期が暫らく続いた。幸運なことに暫らくして、ある大手企業が、この会社の売上の10%以上に相当する仕事を発注してくれるようになった。しかし、順調に事業が回復しつつあったものの、過去の借入金の返済負担は重くのしかかっていたため、経営者の先行きに対する不安は消えてはいなかった。この大手企業と1年ほど仕事を進めたころ、そこから資本参加の申し入れがあり、経営者の迷いにさらに火を付けることとなってしまったのである。

その大手企業からの申し入れは、ニューマネー数千万円で70%以上の資本参加を行い、現在の経営者はそのまま役員に留まり、将来現役員が辞任する時は彼らが保有する株を時価で大手企業が買い上げると言う条件であった。そしてこのニューマネーで、現在、会社の保有する借入金を銀行に返済することも条件付けられた。この案に、経営者間の意見が分かれ、社長以外は大手の資本参加による将来性を期待したほうがよいと言う意見であったが、社長自身は大いに迷うことになったのである。

この話を最初から聞いていた我々は、ニューマネーの導入と言っても、現経営者が創業者利益を現金で受けるわけではなく、会社の借入金が完済され、無借金になった後の会社の70%の支配権を大手企業に握られるのであるから、虫がいい提案であることは最初から分かっていた。しかし、資金繰りの苦労にやつれた社長を見ている他の役員にしてみれば、早く楽になった方がいいというのも分からないではなかった。

夢を持って創業したのに、自分達で作った商圏や外注ネットワークをただ同然で大手に手渡すことに忍びなく、結局、社長はこの買収提案を拒否し、借入金返済コースを採ったのである。勿論、楽になったわけではないのであるが、気持ちの整理が付いたことにより、営業に対しても積極的に打って出られるようになった結果、新規の受注が決まりだしたのである。また、心配した買収提案のあった大手からも、従来以上に発注されており、現在は危機から脱している。

ポイント
 1.共同経営といえども中心になるリーダーは明確な目標を持たねばならない
 2.会社の再生には、親身に相談できる人間の存在が必須である
 3.資金繰りの苦労を出資で切り抜けようとしてはならない
 4.迷いが吹っ切れれば元の軌道に戻れる


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