順調に事業を進めていても、突然不幸に見舞われることがある。今回ご紹介する再生事例は、先代から数十年間金属リサイクル事業を行っていた中小企業が、外注先との間で行った融通手形の発行が原因で連鎖倒産となり、再度復活するまでのお話である。
もともと先代の社長の時代に、会社は数多くの不動産を保有するに至ったものの、それが却って災いし、バブル期に不動産を担保とした巨額の借金を負ってしまった。もともとこの会社の本業は金属の屑を現金払いで回収し、精錬のうえ掛売りする事業であるが、不動産投資に傾注しすぎた結果、好調な本業のキャッシュフローの殆どが、投資資金の返済に回ってしまっていた。そのような状況の中で、精錬を委託していた外注先との間で資金繰りのために融通していた外注先振出しの手形が不渡りとなり、その手形を割引いていた会社は買い戻すことができず、結果的に自社振り出しの手形も不渡りとなってしまったのである。
もともとこの会社が対象とする金属リサイクル事業の全国規模は多くて100億円程度であり、この会社の市場占有率は20〜30%もあり2番手に着けていた。ただ、扱う商品である金属の相場が倒産当時はかなり低い状態で、利益率も芳しくなかったことも倒産の一因ではあるが、事業としての安定感は相当高いものであった。
手形の不渡りの後、会社のとるべき選択肢は限られていたが、取り敢えず破産コースは取らなかった。会社及び経営者個人所有の不動産のすべては、金融機関からの借入の担保に供されており、借入額が不動産評価を大幅に上回っており、破産したところで会社と経営者に何も残らないことは同じであるという判断から、会社の自然消滅を選択したのである。
幸いなことに、従来の商圏は会社が不渡りを出したとしても無傷で残っており、仕入先も原則現金仕入れであったため、金属屑の買付資金の確保さえできれば、従来どおりのビジネスを継続することは可能であった。販売先である大手企業にとっては、品質の高い製品を納入してくれれば、どこの会社でもよいという業界であったため、この会社は従業員の中から新たな社長を指名し、従来の商圏を存続させるために新会社を立ち上げた。ただ、問題は従業員に対する退職金と新会社の運転資金の調達の目途が立たないことであった。
全社員二十数名を集めて、今後の新会社への参加を打診したところ、退職金を出せない会社とは縁を切りたいという者が三分の一程度出てしまった。しかし、辞めていった人達は、ある意味会社にぶら下がっていただけであり、会社の危機を機会に抜け落ちただけのようであった。結果的には意識の高い人達だけで再建のスタートを切ることができ、幸運であったと思われる。一方、運転資金の調達問題は、この会社が儲けられるか否かの見極めにかかっていた。この点、この会社の市場がなくなる訳ではなく、社員の減少による固定費の減少に伴い、損益分岐点が大幅に引き下げられたたことにより、短期融資を申し出る人が現れ、徐々に元の会社の売上規模まで復活することができたのである。
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